特集/コラム

【エリア特集】2008-11-18

3回目を迎えたヨコハマ発の現代アートの祭典
「横浜トリエンナーレ」を支える市民サポーターたち

今年で3回目を迎える現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ2008」。「TIME CREVAS(タイム・クレヴァス)」をテーマに展開するアートの現場は、来場者を非日常的な体験へと誘う。残り半月となった横浜トリエンナーレを、分かりやすく楽しめるようにしている、1年前から活動している横浜市民からなるトリエンナーレ・サポーターの活動を紹介する。

■来場者数20万人を突破!今年のテーマは「TIME CREVAS」

 11月9日に来場者数20万人を突破した「横浜トリエンナーレ2008」。トリエンナーレは3年に1度開かれる世界最先端の現代美術作品(映像、インスタレーション、写真、絵画、彫刻など)の国際展で、2001年にスタートし今回で3回目を数える。今回のテーマは「TIME CREVAS(時の裂け目)」。このテーマについて、水沢勉総合ディレクターは公式ホームページ上で「雪原に口を開くクレヴァスは、きわめて『美しい』ものだといいます。しかし、アートの力は、そこに転落する誘惑を断ち切る力も同時に秘めています。そこにひとびとが交通するための橋を架ける行為でもあるのです。横浜というわずか150年ほど前に、世界へと初めて開かれた、若い都市は、そのようなアートによる橋をかけるための相応しい場所ではないでしょうか。そして、それが文化的な成熟へのたいせつな一歩となってくれることを願い、横浜トリエンナーレ第三回展をわたしは『タイムクレヴァス』と命名したのです」と語っている。

 この3年に1度の現代アートの国際展を普段からアートに接している人はもちろんのこと、アート初心者でも楽しめるようにと、横浜市民を中心に自ら参加を志願したサポーターたちが会期の前から活動をしていることをご存知だろうか。それが「横浜トリエンナーレ・サポーター」だ。

横浜トリエンナーレ2008公式HP

■過去に開催された横浜トリエンナーレ

第1回(2001年)第2回(2005年)第3回(2008年)
総合ディレクター
(アーティスティックディレクター)
河本信治・建畠晢
中村信夫・南條史生
川俣正水沢勉
テーマメガ・ウェイブ
−新たな総合に向けて
アートサーカス
(日常からの跳躍)
TIME CREVAS
参加アーティスト世界38カ国・地域
約110人
世界30カ国・地域
86人
世界25カ国・地域72人
開催期間2001年9月2日
〜11月11日
2005年9月28日
〜12月18日
2008年9月14日
〜11月30日
来場者数約35万人約19万人約20万人
(11/9現在)

横浜トリエンナーレの来場者20万人突破-前回展の記録超える(ヨコハマ経済新聞)運動態として変化を続ける現代美術展。「横浜トリエンナーレ2005」が目指すもの(ヨコハマ経済新聞) 横浜トリエンナーレ2001

■横浜トリエンナーレ2005は横浜に何を残した?

 「前回の横浜トリエンナーレ2005の最大の収穫は、それまで鑑賞者としてしか参加することができなかった市民が、みずから鑑賞者以外の参加の仕方を切り開いたことではないか」と、ある美術評論家は語っている。前回のトリエンナーレから、多くの市民が「市民サポーター」として活躍するようになり、展覧会を盛り上げた。市民記者として広報に関わる人、会期前の会議やプレイベントの運営スタッフ、周辺で行う周辺企画・応援企画の制作・運営に携わる人など、トリエンナーレをより深く味わい、楽しむための関わり方をそれぞれの参加者が模索して発見していった。市民有志が始めたインターネット放送局でのトリエンナーレ応援番組「Take Art Eazy!」は、会期中に延べ19万人ものアクセスがあった人気番組となった。

 トリエンナーレ2005の総合ディレクターだった川俣正さんが就任後すぐに、ZAIMに「アーカイブルーム」が設置され、サポーターの養成の場として「トリエンナーレ学校」がスタートした。この取り組みは、横浜トリエンナーレ2005の成功の大きな素地をつくったと言えるだろう。

 当時の市民広報チーム「はまことり」のメンバーらは、会期終了後に市民報告書『トリエンナーレからシティアートへ』を発行。内容は、トリエンナーレやその周辺イベントに関わった人々と関わらなかった横浜市民、双方の意見を取り上げ、市民の視点から検証するというもので、公式の報告書とは違った角度でまとめられた同書は、アート界からも高く評価された。

 会期終了の翌年2006年6月から、「トリエンナーレ学校」を引き継ぐものとして、当時の市民広報チーム「はまことり」を中心に「ZAIMサポーターズスクール」と名づけた講座が、サポーター・リーダー、ボランティア・コーディネーターの育成や、地元横浜における市民参加による新たなアート資源の開発を目指して開講した。

トリエンナーレは横浜に何を残した? 市民報告書で読み解く2008年への課題(ヨコハマ経済新聞)

■横浜トリエンナーレ2008を盛り上げる!市民参加

 2007年7月14日、第1回「市民応援隊会議」という名称で今回のトリエンナーレへの市民参加はスタートした。台風が接近する悪天候にもかかわらず、トリエンナーレ2008への期待を寄せた70名余りが一堂に会した。参加者は、グループに分かれて市民応援活動の団体の名称や継続して運営していくミーティングの名称、活動内容などについて熱心な討論を行った。この集まりが数回の会議を経て「横浜トリエンナーレ・サポーター」となり、情報発信やイベントの企画運営などを通じて、トリエンナーレを盛り上げる活動が本格化した。サポーターらは全員ボランティア。年齢構成もさまざまで、大学生から会社をリタイアして第2の人生を満喫している人たちまで、さまざまな経歴を持つ人々が集まり活動を行っている。

 サポーターらは今年2月25日、取材から編集・レイアウトまでの全てを担当したフリーペーパー『横浜トリエンナーレサポーターズニュース』の創刊号を発行。水沢ディレクターへのインタビュー記事や昨年12月に行ったサポーターイベント「横浜トリエンナーレ2008ぐるり3会場ウォーク」の様子、サポーターたちの活動内容などを、トリエンナーレサポーター広報グループがアートへの熱い思いを込めて記事にした。

「横浜トリエンナーレ」PR冊子配布−市民ボランティアが編集(ヨコハマ経済新聞)

 広報グループによるフリーペーパーの発行は継続的に行われており、特別版としてトリエンナーレ会場へのアクセス主要駅やアートの拠点などに掲示する『横浜トリエンナーレ壁新聞』も発行。サポーターが企画運営をするイベントとしては、使用時済みのペットボトルでモビールをつないでいく「ふえっこモビール」や、トリエンナーレにちなみ鳥をプラスチックダンボールに自由に想像して描いて切り抜き、完成品を日本大通りに飾る「トリニナーレ」、トリニナーレの宣伝が入った台紙に自由な細工をしオリジナルのバッチを作って身につけてもらう「缶バッジ」など、作品をつくるプロセスを子どもから大人まで一緒になって楽しむことができ、子どもたちにもトリエンナーレをPRできるようなプログラムを考案し、さまざまな場所で「出前アート」的な活動を通じて、自らが楽しみながらトリエンナーレの魅力をアピールする活動を展開している。

横浜トリエンナーレサポーターズWEB 市長へのサポーター活動の説明(こんにちは市長です 市民の力で盛り上げよう(Hi! 横濱編集局)

■トリエンナーレを余すことなく楽しむ「ガイドブック」

 美術専門誌『美術手帖』の別冊として9月に発行されたガイドブック『アートシティ・ヨコハマガイドブック〜横浜トリエンナーレの街を歩く〜』にも、サポーターらが取材・執筆に携わっている。トリエンナーレの開催前に、サポーター広報グループが「本展会場だけでなく、周辺のお店やアートスポット、同時期に開催されているアートイベントの情報を掲載しているガイドブックが欲しい。そして、できれば自分たちで作りたい」と語り合ったことがガイドブック制作のキッカケとなった。

 内容としてはトリエンナーレの特集記事だけでなく、トリエンナーレと同時期に開催されている2つのアートイベント「黄金町バザール」や「BankART Life 2」のほか、日本大通りの創造拠点「ZAIM」などのアートスポット、ベイエリアのおしゃれなカフェやレストラン、開港の歴史を感じさせる歴史的建造物などのエリア情報も手分けして取材し、記事として掲載。横浜のアートシーンのの“今”を知る情報源としても、また横浜の芸術文化と歴史を知る本としても有用なこのガイドブック。同書を片手にトリエンナーレを訪れる人々も数多くいるという。

ZAIM 横浜創造界隈【ザイム】 「黄金町バザール」から広がるまちづくり 地元住民、大学、横浜市が目指す街のルネッサンス(ヨコハマ経済新聞)「市内各所でBankARTが大規模展覧会−トリエンナーレ関連企画(ヨコハマ経済新聞) 美術手帖増刊『アートシティヨコハマガイドブック〜横浜トリエンナーレの街を歩く 『アートシティヨコハマガイドブック』に掲載された写真や掲載されなかった写真の中から厳選されたオリジナルプリントによる写真展が11月18日から30日まで、ZAIM別館301号室にて開催されている。撮影したのは、サポーターである橋本浩美さん。7〜8月の約2か月間、このガイドブックのために横浜市内8エリア・120カ所で、約2,000カットの写真を撮影したという。横浜生まれの横浜育ちという生粋のハマっ子である橋本さんは、桑沢デザイン研究所の写真研究科を卒業後に、コマーシャルフォトグラファーとして国内外に幅広く活動。横浜では中華街のフリーペーパー『Jang』や有隣堂刊『シリーズ横浜18区の本』などの写真を撮影している。今回の写真展では、この2,000枚の作品から厳選した「横浜の美景」をオリジナルプリントで展示するほか、11月22日には橋本さんやサポーターたちが取材や撮影の裏話などを披露するトークイベント「写真家とネイバーズトーク」も開催。

界隈探訪「アートシティヨコハマ」橋本浩美写真展&写真家とネイバーズトーク

■トリエンナーレをさまざまな視点から考える「トリエンナーレ学校」

 前述の「トリエンナーレ学校」は、これまでに15回の講座が行われている。「トリ学」として親しまれているこの講座への参加には、参加費用も申し込み手続きも不要だ。楽しく、時に真剣に、現代アートをより深く理解し、「横浜トリエンナーレ2008」をより積極的に楽しむための学びと実践と交流の場となっている。これまでのトリエンナーレ学校の内容は「こどもたちが語るトリエンナーレ〜キッズ・キュレーターズツアー〜」「現代アートの基礎演習」、「トリニナーレ ワークショップ」「あなたが観てきた横浜トリエンナーレ その1
」「即興表現ワークショップ」などさまざま。

 トリエンナーレ参加作家らや、キュレーターなどの展覧会やアートイベントの企画を仕事にしている人々、普段雑誌や書籍でしかお目にかかれない評論家や美術編集者といったアートの専門家はもちろん、教育、福祉、環境、まちづくりなどの実践者である「まちのスペシャリスト」と横浜トリエンナーレ・サポーターらがコミュニケーションするいい機会となっている。普段、直接話をする機会がないゲストから、アートの現場の裏話やこぼれ話などを聞き、トリエンナーレの奥深い楽しさを感じたり、授業(講演)の後に、ゲストと一緒の交流会でお酒を片手に、アートや横浜やトリエンナーレなどについて論議を交わすことができるのは、楽しく貴重な経験。 トリエンナーレ終了後も、トリ学は継続していくようだ。
横浜トリエンナーレサポーターズWEB 今後のトリエンナーレ学校案内 ■第15回 大巻伸嗣のトーク「シャボン玉で空間を変える」11月16日(日)
■第16回 向井千恵の即興表現ワークショップ 11月22日(土)

■あなたも今日からトリエンナーレ・サポーター 

 日本大通りにあるZAIMでは、トリエンナーレに関するサポーターやボランティアの情報交換や交流の場として、「交流サロン」が毎週火曜日と土曜日の2回行われている。また、ZAIMに入居する「ポートサイドステーション」ではポッドキャスティングによる情報発信を行っている。番組「Take Art Eazy」では、前述したトリ学の講座の一部や水沢ディレクターによるガイドツアーなどのイベントも動画や音声で何度も楽しむことができる。会場に行く前にチェックしておけば作品の背景などを理解し、一層トリエンナーレを楽しむことができるだろう。

ZAIM 横浜創造界隈【ザイム】ポートサイドステーション「Take Art Eazy」

 今回紹介したトリエンナーレ・サポーターらの活動に興味を持たれた向きは、ぜひともサポーターに登録されたい。ホームページからメールを送るだけの簡単な手続きで、さまざまな情報が配信されたりサポーター活動に参加できる。こうした活動を通じて、新たな友人との出会いやトリエンナーレの面白さを知ることができるかもしれない。

横浜トリエンナーレ2008市民協働(財団法人横浜市芸術文化振興財団)

横浜トリエンナーレ2008広報グループ・関野雄太 + ヨコハマ経済新聞編集部

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